PHP の重大な脆弱性「PHP2shell」で何が起きたのか。WordPress のサイトで今すぐ確かめること
先に結論
- 2026年10月21日、WordPress の土台になっている PHP に、ログインなしで外からプログラムを動かされるおそれのある弱点が2件公表されました。
- WordPress 本体やプラグインを新しくしても、PHP の弱点は直りません。直すのは「サーバーで動いている PHP」です。
- PHP 8.1 以前は、PHP の開発元から通常の修正版が出ていません。使い続けているサイトは、急いで確かめる必要があります。
首相のサイトも、銀行も、ゲームも止まった10月21日
2026年10月21日、PHP の開発元が、PHP 本体に重大な弱点(脆弱性)が2件あると公表しました。番号は CVE-2026-109618 と CVE-2026-109619 で、「PHP2shell」と呼ばれています。深刻度は、弱点の危なさを10点満点で表す CVSS という評価で 9.2 です。いちばん上の「緊急」に当たります。
発表を受けて、国内では業種を問わず、サイトやサービスが次々に止まりました。高市首相の個人サイトは21日夜から止められ、22日午後までに再開しています。首相自身も X で、すぐに対応するよう呼びかけました。
高市早苗さんの X の投稿(2026年10月21日)
止まったのは、政治家のサイトだけではありません。報道で名前が出ただけでも、次のような会社や団体が、一時停止や緊急メンテナンスを行いました。
- 政治・行政
- 首相の個人サイト、自民党の政調会長や財務相のサイト、厚生労働省の介護サービスの情報のサイト、札幌市
- 銀行
- 静岡銀行(ネットバンキング)、みずほ銀行、七十七銀行
- 交通
- 日本航空(企業サイト・予約サイトの一部)、京阪ホールディングス
- ネットのサービス
- BASE、コドモン、pixiv、DMM.com、niconico、さくらインターネット(一部)
- 食品
- 湖池屋
- ゲーム
- ウマ娘 プリティーダービー、グランブルーファンタジー ほか
ウマ娘 プリティーダービー公式の X の投稿(2026年10月21日)
名前が出たのは、多くがよく知られた会社や団体です。では、何年も前に作ったまま、誰も PHP の版を見ていない会社のサイトはどうでしょうか。
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10/20
PHP の開発元が「翌日に修正版を出す」と予告
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10/21
IPA が「事前準備のお願い」を公開。午後から国内各社が緊急メンテナンス
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10/21 夜
修正版(8.5.12・8.4.27・8.3.36・8.2.35)を公開。首相のサイトが停止
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10/22
IPA が対策の注意喚起を案内。首相のサイトは午後までに再開
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10/23
Cloudflare の CEO が「別のソフトでも同様の深刻な弱点が公表される」と予告
国家サイバー統括室は、修正をすぐ当てられない場合は「ウェブサイト等を一時的に停止させることも、リスクを低減させるための有効策の一つ」と呼びかけました。国の機関がサイトを止めることまで勧めるのは、めったにないことです。
何が危ないのか。弱点は WordPress ではなく、その下の PHP
WordPress は、PHP というプログラムの言語で作られています。サイトを見に来た人がいると、サーバーの中で PHP が動いてページを組み立てます。今回の弱点は、PHP 本体のメモリの扱いにありました。カナダのサイバーセキュリティセンターは、悪用されると「ログインしていない攻撃者が、好きなプログラムを動かせる」と説明しています。
外から
ログインなしで
細工した通信を送る
WordPress 本体・テーマ・プラグイン
更新しても、今回の弱点は直らない
PHP
今回の弱点はここ。PHP を修正版にして直す
サーバー
レンタルサーバーなら、サーバー会社が管理
WordPress の公式サイトも、今回のための WordPress 本体の更新は要らず、予定もないと説明しています。管理画面で WordPress やプラグインを最新にしても、PHP の弱点は残ります。「更新の赤い数字は全部消したから大丈夫」とは言えません。
ただし、PHP を使っているすべてのサイトが同じ条件で攻撃できるわけではありません。カナダのサイバーセキュリティセンターは、PHP-FPM、Apache の mod_php、php-cgi など、サイトの通信を受けて動く PHP はどの動かし方も対象で、中でも mod_php がいちばん危ないとしています。ほかの動かし方では、別の条件が重なったときに攻撃が成り立ちます。どの条件に当たるかは、サーバーの設定まで見ないと分かりません。だからこそ、分からないうちは修正版にしておくのが確実です。
「今もふつうに表示されている」は、大丈夫の証拠にならない
「うちのサイトは今も見られるから大丈夫」と思うかもしれません。ですが、サイトが表示されているかどうかと、中に何か仕掛けられているかどうかは、別の話です。サイトに入り込んだ側は、見つからないように、見た目を変えずに中に居座ることがあります。
下の図は、ツクリコが PHP の更新のために調べた、あるお客様のサーバーで実際に見つかったものです。サーバーには WordPress のサイトがいくつも入っていて、図の数はそれらを合わせたものです。どのサイトも、見つかるまでふつうに表示されていました(PHP2shell とは別の件です)。お客様が分からないよう、名前や場所は伏せています。
見る人から見えるところ
いつもどおり表示されている
サーバーの中
- 外から操るマルウェア 100個以上パスワードなしで、ファイルの書き換えやデータベースへの接続ができる作り
- 知らない管理者アカウント 10個以上見つかる少し前に作られていた
- ファイルを自由に出し入れできる道具画像を置く場所に、ほかの不正なプログラムと一緒に置かれていた
不正なプログラム(マルウェア)のファイルは、何年も前の日付のものでした。日付は書き換えられることもあるので、いつ置かれたかは言い切れません。ただ、見た目では何も分からないまま、不正なプログラムが置かれた状態で公開が続いていたことになります。
こうした不正なプログラムがあると、サイトの中身を書き換えたり、データベースの情報を読み出したりできてしまいます。お問い合わせフォームの中身や会員の情報をサーバーに残しているサイトなら、それも読まれるおそれがあります。PHP2shell のように外から好きなプログラムを動かせる弱点は、こうした不正なプログラムを置く入口になりえます。修正版にした後も、中を確かめることが大切なのはそのためです。
こんな状態のサイトは、急いで確かめてください
発表の内容から、特に急いで確かめた方がいい状態をまとめました。ひとつでも当てはまれば、まず PHP の版を確かめてください。
- PHP が 8.1 以前のままになっている。PHP の開発元から通常の修正版が出ていない版です
- PHP の版を、誰も確かめていない。作ってから何年も、サーバーの設定を誰も見ていない
- 作った制作会社と連絡が取れない。サーバーやサイトを誰が管理しているのか、分からない
- WordPress とプラグインの更新だけで安心している。PHP の弱点は、管理画面の更新では直りません
- 「今もふつうに表示されているから大丈夫」と思っている。見た目を変えずに不正なプログラムを置かれることもあります
- 修正の前から公開していたのに、乗っ取られていないか見ていない。修正版の公開前から攻撃の試みが見られていました
IPA(情報処理推進機構)は、サポートが終わった古い PHP を使い続けているサイトも見受けられるとして、PHP を使っているものを洗い出すよう呼びかけています。古い PHP のサイトは、今回の弱点だけでなく、これから見つかる弱点にも修正が出ないおそれがあります。
自分のサイトの PHP の版を確かめる
WordPress のサイトなら、管理画面で PHP の版を確かめられます。左のメニューの「ツール」から「サイトヘルス」を開き、上の「情報」を押して、「サーバー」の欄を開いてください。「PHP バージョン」の行に、今動いている版が出ています。その下の「PHP SAPI」の行は PHP の動かし方で、「apache2handler」と出ていれば、いちばん危ないとされる mod_php です。
出てきた版を、次の表と見比べてください。
| 今の版 | 直った版 | どうすればいいか |
|---|---|---|
| 8.5.〇 | 8.5.12 以上 | 8.5.12 以上か確かめる |
| 8.4.〇 | 8.4.27 以上 | 8.4.27 以上か確かめる |
| 8.3.〇 | 8.3.36 以上 | 8.3.36 以上か確かめる |
| 8.2.〇 | 8.2.35 以上 | 8.2.35 以上か確かめる |
| 8.1 以前 (7.4・8.0 など) | 通常の修正版なし | サポート中の版へ上げる(8.2 は2026年12月末でサポートが終わる予定のため、8.3 以上が目安) |
注意したいのは、8.1 以前です。7.4・8.0・8.1 には、今回に限って最小限の修正のもとになるプログラムが出されました。ただし、レンタルサーバーの管理画面で選べるふつうの修正版ではありません。「7.4.33」と表示されていても、それだけでは修正が入っているかどうか分かりません。
また、レンタルサーバーでは、サーバー会社の側で PHP の修正が当てられることもあります。表示の番号だけで決めつけず、契約しているサーバー会社のお知らせも確かめてください。
本当に必要な対策は、4つの順番で
カナダのサイバーセキュリティセンター、IPA、WordPress の公式サイトなどの案内をまとめると、やることは次の順番になります。
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1
PHP の版を確かめる
管理画面のサイトヘルスと、サーバー会社のお知らせで確かめる
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2
修正版の PHP にする
8.1 以前なら、サポート中の版(8.3 以上が目安)へ上げる
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3
すぐできないなら止める
直るまでサイトを一時的に止めることも、有効な手のひとつ
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4
乗っ取られていないか見る
知らないファイルや管理者がいないか見る
古い PHP から上げるときは、サイトが壊れないかも見る
7.4 から 8.3 のように大きく上げると、古いテーマやプラグインが動かなくなり、ページが真っ白になることがあります。切り替える前に、サイトのファイルとデータベースのバックアップを取っておいてください。そのうえで、いきなり本番で切り替えず、サイトの複製で動きを確かめてから切り替えると安全です。切り替えた後に元の版へ戻せるかも、先に確かめておいてください。
設定を変えるだけでは防げない
PHP の設定を変えて避ける方法も出回りましたが、効くかどうかは確かめられていません。PHP の開発元も、設定の変更だけでは安全にならないと説明しています。Cloudflare などの WAF(不正な通信をはじく仕組み)も、修正版にするまでのつなぎです。
修正の前から公開していたなら、中も見る
修正版の公開前から攻撃の試みが見られていたと報じられています。カナダのサイバーセキュリティセンターは、サーバーやアプリの記録を見直し、見慣れない処理・ファイル・アカウント・外への通信がないか調べるよう勧めています。WordPress なら、知らない管理者が増えていないか、見覚えのないファイルが置かれていないかも確かめてください。
今回で終わりではない
今回の修正に合わせて対策に当たった Cloudflare のマシュー・プリンス CEO は、10月23日の取材で、今後別のソフトで「同様の深刻な脆弱性が公表される」と予告しました。
PHP や WordPress は、世界中で使われているぶん、弱点が見つかるたびに更新が必要になります。サイトを持ち続けるかぎり、次の発表が出たときにどうするかを決めておく必要があります。考え方は、大きく2つです。
WordPress を使い続ける
- PHP・WordPress 本体・プラグインの更新を、誰がいつするか決めておく
- 発表が出たらすぐ動ける保守の契約を結ぶ
- 社内で毎日のように記事を書く会社に向く
WordPress も PHP も
使わないサイトに替える
- 見た目とアドレスはそのままで、中の作りだけ替える
- PHP を使わないので、PHP の弱点の発表に振り回されない
- 記事の追加や修正は、頼んで反映してもらう形になる
どちらが正解ということはありません。大切なのは、「次に同じことが起きたとき、誰が何をするのか」が決まっていることです。今回、更新の担当がいないまま慌てたのなら、決めるいい機会です。
出典
- IPA「【事前準備のお願い】PHPのセキュリティリリース公開予定について」2026年10月21日
- カナダ サイバーセキュリティセンター AL26-026(英語)
- BleepingComputer「PHP warns admins of two critical flaws」(英語)
- Fastly ブログ「Core PHP で発見された重大な RCE 脆弱性」
- セキュリティ対策Lab「PHPの重大な脆弱性「php2shell」、修正版と国内サービスの対応状況」(WordPress 公式の案内を含む)
- 電ファミニコゲーマー(国家サイバー統括室の呼びかけ)
- Impress Watch(国内各社の緊急メンテナンス)
- 下野新聞(修正版の公開・国内の対応)
- Yahoo!ニュース(ビジネス+IT)「PHP重大脆弱性でWebサイト緊急停止」
- Yahoo!ニュース(ITmedia NEWS)「高市総理「大至急、PHPパッチ適用を」Xで異例の要請」
- 日本経済新聞(首相のサイトの一時閉鎖)
- ITmedia NEWS(首相のサイトの再開)
2026年10月27日時点で公表されている内容をもとに書いています。新しい発表が出たら、そちらを優先してください。